キャリア開発セミナー32:リーダーシップについて(その2)

 リーダーシップの話に戻したいと思います。皆さんは2015年9月に行われた日本対南アフリカのラグビーの試合をご存知かと思います。ロスタイムでの劇的なトライで逆転勝ちした試合です。

 その時に、メンタルコーチとしてチームに参加していた荒木香織さんが、当時の日本ラグビーチームがどん底から上位チームに変わっていく過程を、リーダーシップ論を交えてお話しして下った講演がありますので、その話をお伝えしたいと思います。

 荒木香織さんは、現役時代は短距離走の選手でしたが、その後スポーツ心理学を学びに渡米し、スポーツ科学で博士号を取得。2012-2015はエディ・ジョーンズ監督率いる日本ラグビーチームのメンタルコーチとして、またエディ監督と選手たちとの間の橋渡し役としてチームに貢献されました。

 エディ監督が就任した2012年当時の日本ラグビーチームは、ワールドカップ直近成績が1勝21敗、一方でエディ監督の戦績は13勝1敗とまるで好対照でありましたが、エディ監督は、日本がワールドカップで最低でもベスト8に入るという目標を立ててチームを作り上げていこうとしていました。

 当時のプレイヤーたちの実情は、ミスをして怒られても、何が悪くて指導されたかわからない、すなわち考える習慣が身についていなかったとのこと。それゆえチームとしての総合力も出せずにいたようで、まずはリーダーシップグループを中心としたチーム内のコミュニケーションの見直し、そしてチームとしての自信、誇り、意欲を持てるような自分たちのチーム作りを始めたと荒木さんは言われました。

 荒木さんは、リーダーシップを次のように定義しています。

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リーダーシップ

リーダーシップとは、目標を達成するために組織されたグループに対して、影響を与える個人の行動過程。

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さらに、リーダーシップは「スキル」であると言われています。スキルであるということは、誰でも訓練によって身につけることができるもの、ということです。

 そして特に当時の日本ラグビーチームに必要なリーダーシップは、変革型リーダーシップであったと言われました。

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変革型リーダーシップ

リーダーは、フォロワーが組織のため私利私欲を超越することにより、持ちあわせる能力を最大限に引き出すことができるよう、情緒的な訴求を通じてフォロワーを鼓舞させる。

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そして変革型リーダーシップに必要な要素を4つにまとめて話してくださいました。

(1)理想的な影響力

  ・リーダーがロールモデルとなる行動をもって、信用、信頼ができて、誠実であることをチームに表明する。

  ・有言実行、道徳・規律、倫理的、基準が

高い。

(2)鼓舞するモチベーション

  ・リーダーの行動がチームの自信や楽観 性に影響を与え、能力を引き出す。

  ・チームに対し、到達点を明確に引き出す

・チームが高い基準に達するように励まし、刺激を与え続ける。内発的モチベーションを向上させる。

(3)思考力への刺激

  ・リーダーがチームに対して、「あたりまえ」に疑問をもたせるように促すことにより、個人が自分自身について省みる、または意思決定に貢献するように仕向ける。

(4)個々への配慮

  ・個々への関心を示し、ニーズと能力を理解する。

  ・チームが一つとなるために、コミュニケーションが必要。練習、普段の生活の中でも、一人ひとりの個性を理解していく。


 こうして出来上がったチームが、誰もが予想もしていなかった南アフリカ戦勝利を導くことになります。

 2012年にエディ監督となり、ラグビースキルの向上はもちろん行われたのでしょうが、リーダーがリーダーとしての自覚を持ち、チームへの影響力を発揮していくとともに、プレイヤーがチームのために今何をすべきか自分で考え協力する、そういう活きたチームに変わったからこそ掴んだ勝利であったと思います。(続く)

タラントディスカバリーラボ

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