キャリア開発セミナー31:リーダーシップについて

・リーダーシップの醸成

 キャリア開発を考える上で、組織内でのリーダーシップのあり方がとても重要な要素になります。

 さて、「リーダー」というのは最初から存在するものなのでしょうか。対象が一人ではリーダーの存在は必要ありませんから、対象は二人以上の集団(組織)の中にいる人となりますね。

 ウォレン・ベニスが著した『リーダーになる』という本の中に、「人間はリーダーに生まれつくのではなく、リーダーになるのである。初めからリーダーはいない。」という記述があります。 

集団の変遷について考えてみましょう。個人は集団の中で、各々自分のカラーを発揮しながら目的・目標に向かって進むわけですが、構成員の動機や価値観、能力の違いなどから、集団は成立したあとに「混乱」の時期を迎えます。その混乱期を経て「成熟」していくのですが、そういう他者との様々な交わる機会に基づいてお互いを理解し、リーダー役割を自他ともに自覚していくようなプロセスがあるのだと思います。リーダーは初めからリーダーだったのではなく、リーダーに変わったのです。

 これはリーダーシップ理論の上でも同様なことが言えそうです。初期のリーダーシップ論は、「リーダーとはその資質を持っている人がなるもの」という理論が主流でした。一種の「強さとか適性」みたいなものが重視されていたわけです。けれども最近では、「その時々の「人」と「環境」に応じて適切な役割が果たせる人」という理論がトレンドとなり、「柔軟さと多様性への理解」がリーダーの重要な要素になってきています。

 

 リーダーシップというのは、一言でいえば「対人影響力」です。ですから、「権威」はリーダーシップを発揮できる一つの要素ではありますが、権威だけでは十分ではありません。人は最終的には、「権威」ではなく「人望」によって動くからです。ですから、リーダーシップは役職者だけが発揮するものではなく、一般社員でも新入社員でも発揮できるわけです。

 ここで「権威」や「影響力」の話が出ましたので、皆さんが役職者であるならぜひとも覚えておいていただきたいことがあります。

 みなさん(特に役職者)は「ゴジラ」である、ということを忘れないでほしいのです。ゴジラは身体が大きく力があって、しっぽも長いです。皆さんが右を向けば、しっぽは遠心力で左後方にある建物を一気に壊してしまいますし、左を向けばその逆に右後方にある建物を壊してしまいます。自分は壊すつもりが無くても、左右を見るだけで結果として建物は破壊されていくわけです。

 組織においても同じで、役職者の影響力は大きいのです。物事の方針決定にしても人事評価にしても、本人にそんな大きな意図がなかったとしても下位者たちはみなさんの言動に敏感に反応してしまいます。どうかこのことを覚えて、常に下位者から見られているという意識を持って執務していただきたいと思います。

 またリーダーは、自分への謙虚さと厳しさを持つことも大切です。自分に甘く部下に厳しいリーダーは、すぐにその甘さを部下に見抜かれてしまいます。自らを律する、つまり自律できることがリーダーの基本的条件であるといえると思います。(続く)

タラントディスカバリーラボ

人それぞれの「心の利き手」に沿ったキャリア支援を目指します

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