キャリア開発セミナー30:人事評価制度について(その2)

次にフィードバックの重要性についてお話しします。

評価というと、どうしても上位者が下位者に対して行うもの、というニュアンスが強くなります。確かに会社のような組織は基本的に権力構造となっていますので、権力と同時に責任を持つ上位者が下位者を評価し、出来なかったことに対しては指導するのは当然です。けれども、「その人の背景となっている人生経験・仕事経験が異なる他者とは、立場や思考、感情も異なる」ことを前提として、時間をかけて納得を得られるような「対話」という向き合い方も大切であると思います。

 対話ですから、相手の話を聴くことも大切ですが、考えたこと、感じたことを「私は~のように思う、感じた」というようにアイ(I)メッセージで返すようにしたいものです。これがフィードバックの主要なポイントです。評価とは別に、普段からフィードバック的な言葉の投げかけを行えるかどうか、信頼関係醸成には大切なポイントになってきます。

また、行動科学の観点からどうしたら人間は動くのか、「人間の動く条件」ということについて考えてみたいと思います。

 人が動く条件についてのPST分析とは、対象となる物事がその人にとって肯定的(P)なものか否定的(N)なものか、またその効果は即時(S)に現れるものか後(A)になって表れるものか、また効果の確実性は確か(T)か不確実(F)か、それを分析することで人がどれだけ動きやすいかを分析します。

 PSTすべて揃っていれば、人がすぐに行動する確率が高いです。でも逆にNAFであれば、どんなに大きな効果が得られると聞いても、中々人は動かないものです。

 禁煙を例にして考えてみましょう。

 禁煙するとイライラして非常に辛いですからN、禁煙の効果はすぐには表れませんからA、禁煙しなくてもすぐに死なないし、病気になる確率がどれだけ増えるのかも不明なのでFで、NAF揃っているので禁煙は中々成功しないのです。

 人事評価についても同じようなことが言えます。期初の頃に頑張って成果を上げた案件があったとします。けれども人事評価は年1回とか年2回というのが通例ですから、頑張って成果を上げた本人からすれば、数か月経過してリアル感もなくなった頃に評価されても、実感がわかないですね。良い評価にしても悪い評価にしても、タイミングを逸することなく声掛けすることが行動自発率を上げるには必要です。決められた評価形式でなくても簡単なフィードバックでいいのです。(続く)

タラントディスカバリーラボ

人それぞれの「心の利き手」に沿ったキャリア支援を目指します

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