キャリア開発セミナー14:学習すること(その2)

 さて、「学習」を考える際に、また違った視点から考えてみたいと思います。

 心理学は、人間の心を科学で捉えようとする歴史であるともいえるのですが、目に見える行動を通して人間の心を捉えることを主眼とした 「行動主義」や「認知主義」は、「学習」と深いつながりがあります。これらを説明する前に、少しだけ心理学の歴史について触れてみたいと思います。

 記憶研究で有名なエビングハウスという心理学者が、「心理学の過去は長いが歴史は短い」という言葉を残しています。誰もが人間の心に興味や疑問を持って生きてきたわけですが、心を科学で捉えようとする試みは最近のこと、という意味です。現在では、ヴントが1879年に心理実験室を創設したのが心理学の始まりと言われています。その後にフロイトやユングが「精神分析」という、無意識の世界に対してのアプローチをしました。寝椅子にクライエント(=患者)を寝かせて、何でも思い浮かぶことをしゃべらせて心の解放を目指したフロイトの自由連想法は有名ですね。

 「精神分析」の後に心理学の世界は、「行動主義」全盛となります。客観的測定が不可能な無意識の世界にフォーカスした精神分析に対し、行動主義は、直接観察可能な行動を研究対象とし、「刺激―反応」の構図を解明することを目的としました。つまり人間は、「刺激」を受けて「行動」に移す受動的な存在であり、「刺激」を制御することによって「行動」を変えることができると考えました。強い刺激を頻繁に与えれば更に行動は促進する(=強化)とか、刺激を与えなければ行動は弱まる(=消去)などの考え方が代表的なものです。無条件反射のレスポンデント条件付けが有名ですね。

 その後、人間は刺激が無くても行動を起こす主体的な存在であり、自らが起こした行動に対して更なる強化を行うことで、その行動が促進される「オペラント学習」が理論化されました。

 これらの「行動主義」に対し、現代の主流は「認知主義」に変わってきています。「刺激―反応」パターンは基本ではありながら、人間は刺激を受けた後に機械的に反応するのではなく、過去の情報を呼び起こし(=記憶)、それが「良い」ものか「悪い」ものかを判断し(=認知、感情)、行動に移す(=行動)という脳内の一連のプロセスを踏んでいる、と考えるものです。一種コンピュータの入力から出力までの流れを示しているのと酷似しています。この「認知」の部分に偏りがあると、求められる行動につながらないため、認知こそが心理学でいうキーポイントであることを「認知主義」はうたっています。(続く)

タラントディスカバリーラボ

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