キャリア開発セミナー15:学習すること(その3)

 さて「学習」に戻りましょう。

 行動主義では、ある刺激(S)に対して反応(R)するS-Rに注目して、どのようにしたら好ましいRを引き出すことができるのかを考えました。但し、同じS-Rでも人によって学習効果が異なってくることを考えたクラーク・ハルは、刺激と反応だけではなく、その間に介在する有機体(Organism)が学習効果に大きな影響を及ぼすことを提唱しました。それがS-O-R理論です。Oは、人間・動物など生物個体に特有の内的要因であり、器質的、遺伝的、性格などの要因を含むと言われています。人それぞれの内的な特徴によって、刺激に対して反応が変わるということは、刺激を発する環境の側の影響を制御することによって、学習効果を変えることができることも意味します。この環境要因による成長の違いについては、集団視点のキャリア開発の項で詳しく述べたいと思います。

 さて、人間は自らに直接影響のある刺激に対して認知を通して何らかの反応をするわけですが、直接影響のある刺激しか学習根拠にならないのでしょうか。

 アルバート・バンデューラは、直接の刺激だけではなく、他者が経験していることを観察することによっても人間は学習できる、という観察学習について提唱しました。これらの代理学習を総称して「社会的学習」といいます。社会的学習とは、「他者の影響を受けて、社会的習慣、態度、価値観、行動を習得していく学習」のことです。私たちは、直接経験できることは確かに尊いし、とくに苦しい経験は自分のバネになることも多いですけれども、直接経験は時間的に有限です。ですから、読書や他者の意見の拝聴、ネットやテレビの情報などを通して代理学習を行い、他者の経験や意見を自分の中で組み立て、それらの刺激をと自己の経験を織り交ぜて持論を作っていくのです。

 また、学習(=インプット)したら、何らかの形でアウトプットすることも大切です。特にビジネスの世界においては、修得しただけでは実際にその知識やスキルを使えることにはなりません。自分で咀嚼して、他者に教示できるようなアウトプットができて初めて、自分のものとなるのです。(続く)

タラントディスカバリーラボ

人それぞれの「心の利き手」に沿ったキャリア支援を目指します

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