キャリア開発セミナー12:自己理解と他者理解(その2)
さて次に、「動機」の角度から自己理解、他者理解に触れてみたいと思います。
動機はモチベーションとも言われますが、その人をある方向に向けて行動させる大きな要因のことです。モチベーションについては、集団視点のキャリア開発の項で、組織と個の関係を織り交ぜながら詳細を述べたいと思いますが、ここでは、人によって基本的に持っている動機が異なることを理解しておきたいと思います。
動機には、「達成動機」「パワー動機」「親和動機」「自己管理動機」「切迫動機」など色々な動機があります。動機にはまった場合に「ドライブがかかる」というような言い方もします。
「達成動機」や「パワー動機」が強い人は、ビジネス界では頭角を現す人に多いです。ビジネスは結果が勝負ですから、その過程にあまりフォーカスしてしまうと、事業家としてスピード感が落ちて勝負機会を逸してしまうからです。目標志向が強く、権威に対しても敏感になります。でも、ビジネス界にはそういう動機を持った人だけではありません。隙あらば仲間の首も取ってやろうというような殺伐とした環境ではなく、同僚との信頼関係の中で落ち着いて仕事がしたいというような「親和動機」が強い人もいます。また、自分で決めたことは自分にやらせてほしい、という「自己管理動機」の強い人もいます。一種の「鍋奉行」のようなタイプです。また「切迫動機」が強い人もいます。私はそのタイプの一人です。
なぜ、自己理解と他者理解のところで、種々の動機があることを知ることが大切か、私の身近な事例を挙げてお話ししたいと思います。
私は切迫動機が強く、やるべきことが生じると、明日ではなく今日中に終わらせたくなってしまいます。今ではさすがにその傾向も自分で制御できるようにはなってきましたが、若いときは極端なところもありました。明日になったらまた新しい課題が生じるかもしれないし、風邪をひいて出勤できなくなるかもしれない…などと考えてしまうからです。学生時代も、夏休みの宿題は夏休みに入る前にできるだけ終わらせるような学生でした。
今でも根っこは同じです。ですから、メールで指示を出したりお願いした案件に対し、相手からすぐに返信が無いと、「なんて呑気な奴なんだろう」という思考になってしまうのです。でもメールを受領した人間は、50%の出来栄えですぐに返信するよりは、100%に近い解答を作ってから返信しようと考えているかもしれないわけで、そこには自分に対する敵対とか嫌悪があるわけではないのです。そう分かっていても、メールを受領した確認とか、その指示に対する基本的な考えとか、およそのスケジューリング感であるとかを即返信することがセオリーだという考えが私には強いゆえ、極端に言えばその対応傾向で、好き嫌いまで影響してしまいます。でも、そういうのが個人の動機の世界なのだと感じています。
逆に考えれば、他者の動機を知ることで、同じ結果を出すにしても、その過程や方法で共感できれば、協働して仕事はしやすくなるということです。
部下は同僚や上司の動機の癖を、また組織のリーダーは、メンバー個々の動機を知ることを努力して、人により適切な対応を考える必要があると思います。(続く)
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