キャリア開発セミナー04:キャリアのオーナーシップ
キャリアは、私の定義でいえば、「自分自身に与えられたタレント(能力・個性)を、いかに自分と他者の幸せと成長に活かしていくか、その歩み方自体のこと」となるのですが、その歩み方というのは、何に基軸を置けば良いのか、もう少し深掘りしたいと思います。
一昔前は、「就職」というよりは「就社」という考え方が根強く存在していました。新卒でどこの会社に就職するか、それでその人の一生が決まってしまう、そんな感じでした。その視点で考えると、「キャリア」というのは、たとえ個人の意にそぐわない命令であったとしても、辛抱強く会社に従っていけば、最終的には会社が待遇も面倒見てくれるし、キャリアも自動的に授けてくれる・・・そのように考えられていました。ですから、社外競争よりも社内競争への関心が非常に高いといった本末転倒な状況も歴然とあったわけです。
でも、キャリアを会社に預ける時代はすでに終わっているのです。会社は個人の終身雇用を保証することもできなければ、キャリアを丸抱えして社員を育てるようなこともできない。それは、日本国でさえ「成熟」を通り越し、10年先も見えにくいような中で、一企業の将来の業績保証など、どんな大きな会社でも不可能であると思いますし、どんな会社でも先が見通せない混沌とした状況に不安を抱いているのが現実だと思います
そういう状況では、キャリアのオーナーになるのは、会社ではなく自分自身であるべきでしょう。自分が自分のキャリアのオーナーになって、常に自分のキャリアについて考え、必要な学習を積み重ねていくことが大切になるのです。そしてその学びは、組織内だけで通用するスキル習得だけではなく、専門を含めた幅広いジャンルの書籍・文献の購読、そして社外の様々な業種の方々との情報交換を通じて、経済・社会の状況や今後の動向について幅広く認識し、広い視野で自分自身の今後の立ち位置や役割を考えていくことが大切になってくると思います。「組織内キャリア」ではなく「生涯キャリア」を作っていくことが必要なのです。ここに一つの基軸があると私は思っています。
またその基軸をさらに確固なものとするため、自己理解を深めることも大切であると考えています。「自分とは××××な人間です」という自他ともに共通する自己認知のことを「アイデンティティ」といいます。このアイデンティティですが、エリク・エリクソンの生涯発達心理学の視点でいえば、青年期に確立するもので、青年期以降はあまり変化しないものといわれていました。けれども、これだけ変化の激しい現代においては、アイデンティティは中年期になっても壮年期になっても、何度も問い直されるものと考えて良いでしょう。学び直しをして脱皮を繰り返す中で、自分らしさというものを節目節目で考える機会が増えてきていることは、当然のことと思います。
このような個人の成長思考の変化に対応すべく、会社は社員に対し、「殻の保護」から「翼の補強」へ処遇・育成を変えていかなければならないと思います。テンプレートを用意し会社人間を作るのではなく、学ぶ姿勢を持っている社員に対し、学習の機会を提供することを約束する会社こそが、これから生き残っていく会社なのだと私は思います。(続く)
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