キャリア開発セミナー03:なぜ今自律的なキャリア開発なのか
平成初期の頃からの日本の歩みは、「失われた20年」と言われてきましたが、その後更に10年が経過してしまい、日本は直近でで30年程のゼロ成長を続けています。
戦後に急成長した先進国家である日本は、昭和の成長期から平成の成熟期を迎え、令和の現在、道路をはじめとした物理的な建築物はもちろんのこと、財政、社会保障、教育などの各分野において、成長期に作ったモデルに様々な疲労を起こし始めています。
現代は、変化が激しく「過去の成功は未来の成功を保証しない」時代であるともいえます。でも変化対応が必要であると言いながら、一方ではそもそも人間は「変化」に対してストレスを感じ、ある面では恐怖すら感じるものです。ですから、IT世界が浸透する少し前までは、少なくても過去からの仕組みと経験による成功モデルを自ら壊しにいくような冒険をする必要もなかったし、過去の成功の延長線上を歩むことが「是」でした。
けれどもIT世界が浸透し始めると、いままで顔の見えなかった「声なき声」であった市民が表に出ることが簡単にできるようになり、価値観の多様な変化好きな市民の声が、企業の方針やあり方を左右するようなことが起こってきました。商品のライフサイクルは短くなり、国境という垣根を越えてコモディティ化が進み、資本は儲かるところへどんどん流れていくようになりました。各国で法人税率をこぞって低下させて多国籍企業を誘致し、一方で税収不足を消費税で補うような転換をもとめられてきたのも自然の流れと言っていいでしょう。過去にアルビン・トフラーが『パワーシフト』の中で著した流れが現実のものとなってきているわけです。
このような変化の激しい流れのことをVUCAと総称して表しています。
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VUCA
V: Volatility 変化が激しい
U: Uncertainly 不確実
C: Complexity 複雑
A: Ambiguity 曖昧模糊
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このVUCAの時代に私たちは生きているわけですが、その中で一番覚えておかなければならないことは、今までに獲得してきた知識やスキルは、VUCAの流れの中ですぐに陳腐化してしまい役に立たなくなってしまう可能性が高い、ということです。
少し古い話になりますが、インターネットが普及する前は、航空機のチケットを予約するために私たちは、旅行代理店を経由して予約していました。旅行代理店は、旅行者と航空会社の間に入ることで、そのサービスの見返りにマージンを得て業をなしていたのです。ところが、インターネットの普及で旅行者自身がネット予約を行い、クレジットカードで支払いを行うことができるようになると、旅行代理店をバイパスするようになります。チケット販売を主業としていた旅行代理店がビジネスの世界から撤退せざるを得なくなったわけです。インターネットという通信インフラの整備が、ビジネスモデル自体も変革してきた一例といえるでしょう。
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授が2013年に「未来の雇用」という論文を発表したのですが、その中で同教授は、「コンピューターの技術革新がすさまじい勢いで進む中で、これまで人間にしかできないと思われていた仕事がロボットなどの機械に置き換わっていくことを想定すると、この10年から20年の間に約半数の雇用者が仕事を失う」と発表しました。それだけデジタル化の流れは大きく早いものであるということです。
「デジタル・ボルテックス」というデジタル化の加速で諸業界がどのようにその渦に巻き込まれていくのか、IMDとシスコの共同で取り組んだレポートを読むと、更にその信憑性が増してきます。
(https://www.cisco.com/c/dam/m/ja_jp/offers/164/never-better/core-networking/digital_vortex.pdf 参照)
このようにビジネスの在り方自体が常に技術革新の波に揺り動かされるような時代にあって、私たちは自分の「キャリア」をどのように考えていったら良いのでしょうか。(続く)
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