大人になるということ

河合隼雄先生の著書「大人になることのむずかしさ」は、青年期を過ごす若い人たちの心理面を描いたもので、我々支援職がどのような心構えで青年たちと接するのか、大切な示唆を与えてくれます。

同書の第5章から、「大人になるということはどういうことか」、そのエッセンスを抜粋して以下に記載させていただきます。

青年期を過ごす若者とは、勉学やスポーツに励む学生も、また社会に出て新たな経験を積み重ねている社会人もあてはまりますね。

学校でも企業でも、指導・支援する立場の人間が、覚えておきたいとても大切なことと感じました。


 大人になるためには、何らかのことを断念しなければならぬ時がある。単純なあきらめは個人の成長を阻むものとなるだけだが、人間という存在は、自分の限界を知る必要があるときがある。これは真に残念なことであるが致し方ない。単純なあきらめと、大人になるための断念との差は、後者の場合、深い自己肯定感によって支えられている、ということであろう。自分としては、ここが限界だからここまでで断念しようとか、二つのことは両立させがたいのでこちらをとろうとか、どうしても成就し難い恋を断念するとか、もちろんそのときは苦しみや悲しみに包まれるだけのときもあろう。しかし、それによって大人になっていく人は、そこに深い自己肯定感が生じてくることを感じるであろう。

 この点については、青年を援助、指導する人がよく知っていなければならないことである。人間はすべてのことができるはずがなく、何かができない、ここが限界だと解るときがある。そのときに、そのことのみによって人を評価するのではなく、勉強ができないとか、どうも人とうまく話せないとか、色々の欠点があろうとも、そんなことは人間本来のもつ尊厳性にかかわりのないことを、指導する立場にある人が、はっきりと腹の底に据えて知っていることが大切である。そのような人との人間関係を通じて、青年は自分の無能力を認識しつつも、自己嫌悪に陥ることなく、立派に大人になってゆけるのである。

「おとなになることのむずかしさ」河合隼雄 Ⅴ大人とこども より抜粋

タラントディスカバリーラボ

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