キャリア開発セミナー34:学習する組織

次に、「学習する組織」というテーマで考えてみたいと思います。

 個人視点で「学習」が大切であることはすでに述べましたが、組織自体も学習する体質を持つことが大切です。

 高度成長時代、日本は製造業を中心に、「海外から安価な原料を輸入しそれを国内で加工・組み立てを行い、完成品を輸出する」というビジネスモデルをフル活用しました。国力が上昇するに伴い賃金も上昇し、万年インフレ体質は、このまま日本が成長し続ける証とも思われました。しかしながら、オイルショックを契機に成長が鈍化し、昭和末期からは名目GDPがフラットになる成熟国家と変わってきました。

 成長を続けている最中は、企業は「前例踏襲」「経験重視」「規模の拡大」が基本となり、その業界での従順な経験者がビジネスの正解を作り出す経営者にふさわしいと考えられました。

 でも現在は、誰も正解を作りだすことはできません。従順な企業経営者も、今までの経験や今までの正解が将来の正しい正解になるのかどうか、判断ができません。

 ではだれが正解を作り出すのでしょうか。誰が方針を決めるのでしょうか。

 それでも、基本的に経営者が方針・方向の決断をするのが常道でしょうが、先が見えにくいのに過剰な投資や極端な方針転換などは、よほどの胆力や勇気が無ければできません。

 一方で、ビジネスの最前線にいるのは、肩書の無い一般職の社員や主任クラスぐらいまででしょう。これらの社員が末端を支えているわけですが、一人ひとりの役割分担は小さいけれども、目の前で何が起こり、今後どのようになりそうか、それを一番知っているのはこの人たちです。

 このゾーンにいる社員が、今後どうしたら自分たちのビジネスが「拡大する」、「効率的になる」、「品質が向上する」のか考え、改善のためのPDCAサイクルをしっかり回したとしましょう。でもこのサイクルだけでは組織の力にはなりません。個々の社員の課題解決が経営課題解決に繋がっていくには、その間にいる主任、課長クラスが、部下たちが考えて回そうとしているPDCAサイクルのプロセスと仮説を汲み取り、それを支援し続けることが重要です。そして、部下たちの仮説を組み合わせて部門レベルの成長仮説に統合していくこと、更にその仮説を他部門メンバーとともに共有することで、全社レベルでの仮説に束ねていくような学習作業が必要なのです。

 仮説は、必ずしもすべてが採用される課題になるとは限りません。ですから、たくさんの仮説をスピード感を持って作り、PDCAサイクルを速く回していくことが重要です。

高度成長期には、経営陣が作った大きなPDCAサイクルを部下が黙って回していけばよかったのです。WHAT(=何をすべきか)は経営陣が考え、HOW(=いかにするか)は管理職が考え、それ以外のメンバーはDO(=黙って仕事をする)

をしていればうまく会社が回りましたが、現在は、全員がWHATを考えなければ企業の進む道を見出せません。この「全員WHAT構築体制」+「中間職の試行錯誤・仮説の統合作業」ができる組織が、「学習する組織」ということになるのです。(続く)

タラントディスカバリーラボ

人それぞれの「心の利き手」に沿ったキャリア支援を目指します

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