キャリア開発セミナー19:能力観について

 ここで、2つの能力観について触れてみたいと思います。

 キャロル・ドゥエック博士は、「人生で成功している人の特徴」として、「増大的知能観を持っている」ことを示しました。

 知能観には2種類あります。固定的知能観と増大的知能観です。

 固定的知能観とは、人の知能はあらかじめ与えられたものであり、それ以上に高まることはないという考え方を指します。この知能観を持つ人は、自身の失敗を能力不足のせいにする傾向があります。この知能観を主とする人は、失敗したくないので、自分ができそうもない課題に対してはチャレンジしなくなります。自分が成長できない理由を、自分で作ってしまっているのです。一方、増大的知能観を持つ人は、自分の能力は有限ではなく、経験や努力によって磨かれるという考え方を指します。失敗したときに「努力が足りなかった」など、自分の行動に問題があったと考える傾向があります。

 行動に問題があるなら、次は行動を改めればいいだけですから、この知能観を持った人は、失敗を自分の成長の糧にできます。

 また固定的知能観を持つ人は「遂行目標」を立てやすく、増大的知能観を持つ人は「熟達目標」を持ちやすいとドゥエック博士は言っています。

 この目標の立て方を見てもお分かりの通り、固定的知能観と増大的知能観の持ち主の大きな相違は、「自分に対する評価軸をどこに置いているか」ということです。キャリアの定義の項でも触れましたように、他者からの評価をあまりにも気にし過ぎると、本来自分自身が与えられている才能や個性(=タレント)を上手く使うことができません。

 「行動する前に考える」というのは、ビジネスパーソンにとって必要な思考法ですが、これはあくまで実務を行う際の鉄則であって、物事を効率的に行う必要のある仕事に関していえることです。これに対し、目に見えない内的な部分を大切にするようなキャリア開発においては、相応の試行錯誤も必要であり、間違っていたら修正して歩み直せばよいわけで、「行動してみないとわからない。行動してみて今まで見えていなかった世界を見て、改めて考え直す」という適切な修正主義こそが大切です。そのための基本的な考え方として、私たちは「増大的知能観」を身につけることが大切だと思います。

 「躓くことは良いことです。前に進んでいるから躓くのであって、前に進んでいない人は躓かないからです。」という言葉は、苦しいときでも常にチャレンジャーでいたいと思う私の座右の銘になっています。(続く)

タラントディスカバリーラボ

人それぞれの「心の利き手」に沿ったキャリア支援を目指します

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