キャリア開発セミナー41:自己動機づけ(モチベーション)(その5)
ここで、今一度「外発的動機付け」と「内発的動機付け」について詳しく見ていきましょう。
以前にもお話しいたしましたように、経営学的視点で動機付けを考える場合に、オペラント条件付け(新行動主義)の考え方は避けて通れないと思います。「頑張った結果何がもたらされるのか」、「反応しただけ環境側が報いてくれるので更に行動を起こす」という、自分自身の主体的な環境への行動を起こさせるような仕組み作りです。
それを踏まえた上で、企業人にとっての外発的な報酬と内発的な報酬を例にとって考えてみたいと思います。
組織の中でのやる気を上げてもらうために、外発的な報酬の効果は重要です。でも、人間はすべて合目目的に動くわけではありません。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが述べたように、経済合理性だけで人間は全て動くとは限らないのです。それは、上記の内発的報酬の要素であったり、また事象を超えたその人の哲学だったり正義感であったりもすると思います。
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・外発的報酬
昇給、ボーナスなどの金銭的報酬、または昇進、表彰、人からの賞賛や承認、メンバーからの受容、リーダーによる配慮など。
・内発的報酬
達成感、成長感、有能感、仕事それ自体の楽しみ、自己実現など。
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企業における外発的報酬と内発的報酬
ただ企業としては、生み出される価値は色々な種類の価値があるとはいえ、他者と比べて目に見える多くの価値を生み出した社員に対してより大きな処遇をするという、外発的報酬を中心とした評価・処遇制度を活用するのが一般的です。骨折をして松葉づえをついていれば、「大丈夫? どうしたの?」と周囲が気が付きますが、心が折れていてもその痛みが周囲には分からないように、目に見えない価値は、残念ながら短期的には評価しにくいのです。
ただし、外発的動機付けも人的管理に万能ではありません。一般的には効果的に作用しますが、あまり偏ったやり方を行うと、以下のようなマイナス点も生じてしまうことが懸念されます。
(1)報酬が罰になってしまう。
→報酬も罰と同じく、人の行動をコントロールする。また、報酬を通じての働きかけは、欲しいと思っていてももらえない他者を生み出す。
(2)報酬が人間関係を破壊してしまう。
→報酬の受取において、勝ち組と負け組が生まれる。コントロールされる側が、コントロールされていると気付く。
(3)報酬に頼ると行動の理由を無視してしま
う
→本来大切なのは、成果を上げられなかったときに、報酬をあげないこと以上に、次はどうやったら良くなるか前向きに検討すること。
(4)報酬が冒険を阻害する
→言うとおりにしかやらなくなる。
(5)報酬に目がいき、やっていることへの興味を失う。
→アンダーマイニング効果。
(6)報酬は使い出したら簡単には引けない。
(7)報酬はそれを得るための手抜き(最短ルート)を選ばせる。
→革新、創造の世界にはつながらない。
私たちは、いくら巨大でも将棋盤の上で「駒」になるよりは、たとえ小さい将棋盤でも「指し手」になってゲームしたいですよね。
自分の成長について自分の基準を持ち、外発的報酬を活用しながらも内発動機を大切に歩みたいものです。(続く)
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